株式会社明翫組

New head office project

耐震診断を経て思うこと

平成29年2月28日

金沢市から避難路(緊急輸送道路)に面する建築物の耐震化へ向けたお知らせが届く。
内容を確認すると、本社ビル(RC5階建て)が地震時に倒壊した場合、前面道路の過半を閉塞する恐れがある「通行障害建築物」に該当する可能性があるという旨。
※「通行障害建築物」とは昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の高さ6mを超える建築物通行障害建築物に該当する場合、建物の耐震化について市の補助制度を利用できるので耐震化を検討するようにとの事。
すぐに、本社ビルの図面を引っ張り出してきて確認したところ、「通行障害建築物」に該当していることが判明大規模災害時に緊急車両が緊急輸送道路を通れるように啓開し、的確な人命救助や2次災害の防止に繋げるのが我々、建設業者の使命である。
その建設会社の本社ビルが倒壊し緊急輸送道路を閉塞することは地域の皆様のためにも避けなければならない。
金沢市の建築指導課へ相談に行き、建物耐震化の流れと補助金手続きを確認し、とりあえず本社ビルの耐震診断を行うこととする。
耐震改修工事を行い、あわせて内外装をリノベーションすることの検討開始。

平成29年6月10日

事前に調査を行い確認した場所のコンクリートコアを採取する耐震診断を実施。

平成29年6月15日

6月10日に採取したコンクリートコアの強度が著しく低いところが2箇所あったため、明日16日に追加の採取を行う旨の連絡が入る。

平性29年8月2日

耐震診断結果と補強概要計画書の説明を受ける。想定したよりもコンクリート強度が低く、大規模な耐震改修工事が必要とのこと。また耐震補強を行うことで、倒壊はしないが使用不能になる場合もある旨の説明あり。
折角、改修工事を実施しても使用不能では、大規模災害時に本社機能を継続できないので困る。倒壊で迷惑はかけないが、地域のお役にも立てない。

リノベーションで構想を練っていたが、断念し、新築について検討する。
そもそも、建設会社の本社とはどのような形でどのような機能があれば良いのだろうかと考える。建設会社は現場でものづくりを行い、その対価として報酬を得て、利益を計上している。
本社でものづくりを行っている訳ではないので、事務などを必要最小限行えるスペースがあれば通常業務上は問題ない。
そう考えると、本社ビルを解体して、耐震基準を満たしたこじんまりとした社屋を作ってもいいのではないか。
しかし、その社屋が、地域活性ややすらぎの創出、今後の会社経営やブランディングに活きてくるのかと考えてたら、そうではないと思った。
旧本社ビルは5階建てで約370坪とボリュームがあり、周辺地域でも目立っていたため「泉野の明翫組」というイメージを定着させていた。
元々、白山市の美川町にあった建設会社が、金沢市の泉野町にある建設会社となった。
勿論、社屋だけで美川の明翫組から金沢の明翫組に定着した訳ではなく、これまで行ってきた工事や携わってきた人達の「歴史」があったからであるが、明翫組と言えば、「あーあの泉野にある」というイメージは社屋によるものではないか。
その社屋を解体し新しくするにあたり、「あーあの泉野にある」を無くす訳にはいかないし、それを超えるものへ定着させることが、我が社の次なるステージへと繋がっていくのではないか、そう考えた。

設計事務所の選定

リノベーションから新築へと方針が変わり、頭の中を切り替える。
隣地の泉野保険福祉センターが建て替えのため、移転し跡地は公園になると聞いている。
向かい側には泉野図書館もあるので、社屋の1階に貸しスペースを設け、公園や図書館に来た方が利用できる店舗を誘致できれば、地域の潤い創出へ繋がるのではないか。
そう考えると、なんとなく、外内観ともに会社っぽくない雰囲気が良い。
どこか別荘のような非日常感があると良い。
漠然とそんなことを考えながら、工事全体の予算や使い勝手、必要なスペース、デザイン、構造は木造が良いかなと頭の中を整理していった。

設計と施工をどうするか。
施工は勿論、自分達で行うとして、設計をどうするか。
我が社としても設計事務所を開設しているので、自社で設計することも可能である。
その場合、外部に依頼すると発生する設計料は不要だし、予算も意匠設計もコントロールできる。
しかし、作る側(施工側)として、意匠設計で無理をしないことから、完成イメージが自分で予想できる建物になると思っていた。

そんな時に、ある建築雑誌を見ていたら、Keisuke Kawaguchi+K2-DESIGN (広島県)の「逗子披露山の家」竣工写真に目を惹かれた。
杉の模様が入ったコンクリート打ち放し壁に、落ち着いた色の無垢フローリングと天井羽目板。
大きなサッシにスキップフロアを用いることで、左右上下に抜けがある空間が演出されていて、どこか別荘のような非日常感がある。
純粋に格好が良いと思うと同時に、その洗練されたデザインから、作った会社と現場監督は苦労しただろうなと思った。

それでも、「逗子披露山の家」竣工写真が社屋のイメージとバッチリ重なっていたことから、河口さんとお会いしてみたいと思う。
早速、友人を通じてアポを取って来沢頂き、旧社屋でお会いしたのだが、
お互いの思いや考えを話していく中で、我社の2本柱である土木事業をRC造、建築事業を木造で表現した混構造の建物が良いと提案を頂く。
予算と施工性の兼ね合いから、構造は木造で考えていたのだが。
しかし、河口氏が建物のイメージをその場でスケッチしたのを渡され、見てみると自分が想像していなかった建物が描かれていた。
自分の想像を超えないのであれば自社で設計すれば良い。
土木をコンクリート、建築を木造で表現する。面白い発想だし、腑にも落ちた。
これはもうお任せするしかないと決意した。

※ちなみに、そのイメージスケッチは、最終の意匠図にほぼ反映されている。

イメージスケッチ